教室に思いを馳せて

元中学校英語教師のブログです。

テスト10点台の生徒が,入試の英作文問題で点数をとるための苦肉の策とは

3学期が始まり,3年生にとっては入試も直前となりました。

今回はある男子生徒への受験対策を思い出したので,そのことを書こうと思います。

 

A君は,2年生の2学期に転校してきました。

勉強は苦手なようで,前の学校の成績は1と2のオンパレード。

スポーツが好きで,性格が良くて人なつこい彼。

勉強ができないからと言って卑屈になるわけでもなく,非行に走ることもありませんでした。

 

周りの人からも好かれるので,彼ならきっと大人になっても可愛がられ,誰かが手を差し伸べてくれるはず。

 

人としては十分魅力的なA君なのですが。

その前に,なんとか高校には合格しなければなりません。

 

2年生の2学期に彼が正しく読めた英単語は” I “ と“ you “のみ。他は当てずっぽう。

正しく書ける単語もその2つ。

 

これには本当に困りました。

基礎が全くできていないのです。

他の教科も基礎からのやり直しが必要でしたが,中でも英語は致命的でした。

 

中間テストや期末テストでは0点はとらないものの,それは全て勘を頼りに記号問題で得点を稼いでいるから。

記号問題以外の解答欄は,ほとんど白紙でした。

そのため点数は1ケタから20点以下。

 

その学校は小規模校だったので,A君に時間をかけられたのが幸いでした。

まずは音読だと思い,授業では特に教科書の音読に力を入れました。

家に帰ってからは友だちと宿題をしていた彼は,友だちと本文の音読も練習していました。

その甲斐あって,3年生の2学期にはなんとか教科書の本文を最後まで読めるようになりました。(初めて最後まで一人で読めた時は,私も他の生徒たちも感動しました。)

 

でも入試ではある程度は点数をとらせてあげたい。

いつもの記号問題に頼っていてはダメだ。

 

点数をとるなら英作文問題だと思いました。

配点が大きい英作文の問題を,白紙で出すのはもったいない。

でもA君は音読はできるようになったものの,英文を書くのは依然苦手なままでした。

 

そこで私が思いついたのが,

I like soccer.

I play soccer.

I enjoy soccer.

の3つを書けるようになること。

 

likeとplayは登場回数が多い単語だし,enjoyは書きやすいと思ったので動詞はその3つ。

スポーツ好きの彼は,サッカーよりもバドミントンががいいなぁとボヤいていたけど,スペルが長いと間違いやすいのでここは我慢してもらって。


苦肉の策でしたが,解答欄に何も書かないよりマシです。

もしかしたら1点でも2点でももらえるかもしれない。

その1点が合否を左右するかも。

 

彼は3学期の間ほぼ毎日,提出用ノートにその3文を繰り返し繰り返し書きました。

本当はもっと多くの文を書けるようになってほしかったけど,とにかく正しく書けるようになるのが先決。

ちょっと気を抜くとlikeをlaikと書いたりplayをpleyと書いたりするので,その3文のみに集中させました。

 

そうして迎えた本命の公立入試本番。

 

その年の英作文問題は,

【将来は都会と田舎のどちらに住みたいか。どちらかを選び,Because...のあとに続く英文を書きなさい。ただし英文は3文以上とし,1文につき3語以上書くこと。】

というものでした。

 

問題文を読んだとき,この内容ならあの3つの文が書けたら部分点はもらえるのではないかなと思いました。

 

入試翌日,A君に「どうだった?」と聞くと英作文問題で3つの文をちゃんと書けたそう。

しかも,本人曰く「リスニングもいつもよりできたし,解答欄は全部埋めました!」とのこと。(その自信がまぁこわいけど。)

 

そして後日,彼は無事に志望校に合格しました。

 

彼が中学校3年間で正しく書けた英文は,おそらくたったの3つ。

でも合格後の彼の笑顔を見ていたら,それでも十分じゃないかと思えたのでした。